第27章 トド松ルート1 blinded
「自分に聞く…」
胸に手を当て、目を閉じてトト子や六つ子を思い浮かべてみる。
「友達は、一緒にいると楽しくて、嬉しくて、元気になれて、何かあったら力になりたいなって思う」
「うんうん。説明の必要がないほど至極当然の感情だね」
「それはたぶん好きな人でも同じ。だけど、ある人といると——」
先ほどのトド松との出来事を思い返せば、胸の奥を言い知れぬ痛みが襲った。
「なんか、自分の嫌なところばかり見えて、苦しい。辛いよ」
店主は飲みかけのカップを置き、腕を組んで目を細めた。
「それがきっと恋愛感情なんじゃないかな?恋すれば恋するほど、嫉妬や不安、エゴ——マイナスな自分の感情と向き合うものさ」
と、ニヤリと片方の口角を上げて…
「もしかしたら、想い松くんも今頃苦しんでるかもね?」
「想い松くんて…!もうっ!」
「ははははっ!ゆめ美ちゃんは本当にからかいがいがあるなぁ!」
隠し事が下手なゆめ美は顔中まっかっかである。
「私、謝らないと」
驚いて頬をはたいてしまったのだが、きっと拒絶と捉えられてしまったに違いない。突然詰め寄られ、いつもの優しいトド松からは想像もつかない行動に動揺してしまったのだ。
(私、ずるいよね。一松の事を誤魔化して逃げようとした)
はたいた後、トド松が見せた複雑な表情がゆめ美の胸を締め付ける。
一松と"なにもなかった"と言ってしまった自分が許せなかった。
あの夜、確かにゆめ美と一松は友達以上の心のやり取りがあったのだから。