第27章 トド松ルート1 blinded
路地裏の奥へ進むと、猫缶を夢中に食べるニャンコの姿があった。ゆめ美は腰を落とし、愛おしげにニャンコの丸い背中を見つめる。
「へーっ、エスパーニャンコはここに住み着いてたんだ」
トド松も屈んで覗き込めば、ニャンコはキョトンと小首を傾げまたすぐ食べ始めた。
「うん、一松が時々ごはん持ってきてくれるんだ」
「一松兄さんは猫大好きだからね」
「あははっ、猫みたいだもんね一松って。近づくとそっぽ向くけど、さりげなく側にいてくれるとことか」
自分のトモダチの話題が気になるのか、ニャンコは耳をピンと立てている。
「最近ね、ようやく一松が分かってきたかも」
「分かってきたって?」
「はじめは避けられてるのかなって思ってたけど、人一倍傷つきやすいから人一倍臆病なだけで、本当は人一倍優しいのかなって——」
そこまで言うと、ゆめ美はハッとした表情になり、ぶんぶんと手を振った。
「な、なんとなくそう思ったの!なんかゴメン、勝手な解釈しちゃって」
「…勝手なんかじゃないよ」
恥ずかしそうに目を伏せたゆめ美を覗き込むトド松。
「ありがとね、一松兄さんと仲良くしてくれて」
ゆめ美に胸キュンスマイルを向けながら続ける。
「あの猫松兄さんが人間、しかも女子とフツーに話せるとかすごい進歩だもん。ボクら兄弟以外に仲良い人なんてほとんどいないしね」
「あははっ、私もそんなに友達いないけどね」
「呼び捨てで呼び合うとかボクからしたら奇跡だし。旅行からだよね?二人が更に仲良くなったの」
「そ、そう…かな?」
ゆめ美の顔がみるみる赤くなってゆく。