第27章 トド松ルート1 blinded
(それに、旅館であの二人だけ女将に捕まるのが一番遅かったんだ。もしかしたら、ユメと一松兄さんは…)
黒い気持ちは肥大化し、もう抑えられない。
(…チューしたのはボクが先なのに!)
トド松はツカツカと二人の元へ向かう。満面の笑みを貼り付けながら。
「一松兄さん、餌やり終わった?」
「あ?あぁ。てかお前、猫見に来たんじゃないの?」
「うん、だからこれからユメと見にいこっかなーって」
そう言って、ぐいと腕を掴み二人を強引に引き離す。急なトド松の提案にゆめ美は少し困り顔。
「トッティごめん、これから片付けしようと思ったんだけど」
「ふふっ、ちょっとだけ息抜きしなよ?ね?いいでしょ?」
腕を組む弟とゆめ美を一瞥し、一松はくるりと背を向けた。
「おれは用が済んだから……帰る」
「一松?」
「えー、もう帰っちゃうの?寂しいけどバイバーイ!」
一松は振り返ることなく猫背を揺らし帰って行った。