第27章 トド松ルート1 blinded
賄いを食べ終え、気恥ずかしさから逃げるようにゆめ美は立ち上がった。
「ごちそうさまでした。私、一松見てくるね」
トド松は頬杖をついたまま声をかける。
「一松兄さんならほっときなよ。猫との時間を邪魔したらきっと怒るから」
「でも、せっかくだからうちで涼んでいけばいいのに…」
「だいじょーぶだいじょーぶ!餌やり終わったら来るって」
「そうかな……あ、出てきた!」
「え?早っ」
のそのそと歩く猫背を窓越しに発見すると、ゆめ美は一松の元へ向かい、ドアを開けて店に招き入れている。
残された末っ子は、その背中を見つめむくれ顔。
(あーあ、もうちょっと独り占めしたかったのに…!)
なんだか面白くなくて、ドアの前で話し込んでいる二人を他所にスマホをいじり出す——と、耳に入る会話に違和感を感じ指の動きが止まった。
(……そういえばユメって、一松兄さんのこと呼び捨てにしてたっけ?いや、はじめは君づけだった。うっわ盲点ー!いつの間に?いつだ?いつからだ?)
記憶をさまよい、トド松が行き着いた答えは——
(旅行だ!しかも一松兄さんも同じ時期からユメを呼び捨てだ。前は恥ずかしがって名前すら呼べなかったくせに)
視線の先には、笑顔のゆめ美とキョドキョドする兄の顔。
ゆめ美に話しかけられて本当は嬉しいのに、必死に隠そうとしてるような、そんな顔。
(ちょっと待ってなにあの初々しい感じ。分かり易っ。万年思春期かよ。絶対好きでしょアレ。さっきだって、ユメの話になったら急に出かけるって言い出してさ…)
嫉妬の炎がメラメラと燃え上がる。