第27章 トド松ルート1 blinded
アカツカ亭へ着くと看板はCLOSEになっていた。
トド松が窓を覗けば、ちょうどゆめ美が休憩中で賄いを食べている。
「ボクちょっとユメと話したいから先猫のとこ行ってて」
「は?」
窓越しに手を振るトド松に気がついたゆめ美が立ち上がって手を振り返す。
(猫見たいっつってたくせに…)
「…まぁ、いいけど」
一松はトド松の背中に吐き捨てるように呟くと、ゆめ美にバレぬようコッソリ路地裏へ消えて行った。ゆめ美とは旅館でセクロス未遂だったのもあり、未だに気まずかったし、
(べつに、ゆめ美がおれに会いたいわけないし…)
なんてネガティヴを装いつつ、弟に恋路を譲ったのだ。
・・・
アカツカ亭に招き入れられたトド松は、ゆめ美の向かいに腰掛けた。笑顔でゆめ美から水を受け取る。
「ありがとう!はー暑かったー」
「連絡無しで急にくるなんて珍しいね。どうしたの?」
「特に用は無いけどさ。ユメの顔見たくなっちゃって」
「もう、調子いいんだから」
ナポリタンをフォークに巻きつける意中の人を見て、トド松は心の中でほくそ笑む。クソ兄共がいない今は距離を縮める絶好のチャンスなのだ。
「あの——」「ねぇトッティ」
デートの約束を取り付けようとしたトド松の声がゆめ美の声と重なった。
「なに?」
「そういえば、誰か一緒にいなかった?」
「え?あぁ、一松兄さんだよ。猫に餌やりだってさ」
「そうなんだ。私も見にいこうかな」
「先にお昼食べなよ。冷めちゃうよ?」
トド松は笑顔でそう言うと、さりげなくゆめ美の頭をポンポンと撫でた。
兄五人——特に一松に対抗意識を燃やす末っ子は、兎にも角にも積極的だ。