第27章 トド松ルート1 blinded
アスファルトが真夏の日差しを照り返し、商店街はまるでサウナ状態だ。
ペットショップのビニール袋を手に持ち、汗を拭いながら歩く一松の斜め後ろを、SPF120でバッチリ紫外線ブロックしたトド松がニコニコしながら歩いている。
「へー、知らなかったなー。一松兄さんに行きつけのペットショップがあるなんてさっ。あそこの店員さんけっこう可愛くない?一松兄さんのことチラチラ見てたし、猫缶探すフリして話しかければいーのに」
「…見てないでしょ、おれなんて…」
「そんなことないって。向こうも猫好きで話し合うかもしれないよ?」
「ケッ、話しかけたが最後、通報される…」
ニタァと薄ら笑いを浮かべて自虐する兄に嘆息するトド松だったが、ついてきた真の目的を果たすまでは帰るわけにはいかなかった。
「また闇ぶっちゃって。で、これからの予定は?」
「猫にエサやりに行く」
「どこに?」
「……アカツカ亭の裏」
「ふーん。ボクも猫見たいし行こうかなっ」
ピッと人差し指を頬に添え、トド松。
「……べつにいいけど」
(急になんなの?なんでコイツこんなにつきまとってくんの…!?)
あざといの範疇を超えるしつこさに、嫌な予感しかしない一松だが、隣の末っ子は終始笑顔でついて来る。
「楽しみだなー!ユメ今日仕事かな?今の時間なら休憩中じゃない?」
「おれは店寄らない」
「そんなこと言って、実はユメと会えるかもなんて思ってるんじゃないのー?」
「なっ、なんでおれがそんな淡い期待しなきゃなんないの!」
「あれ?顔赤いから図星?」
トド松がからかうようにほっぺをつつこうとすると、一松はボクサーのように身を翻し華麗に避けて前を行く。
「なに今の!?反射神経どーなってんの!?」
「……」
何か言ったらまた墓穴を掘ると判断し、口をつぐむ一松。
そんな兄の顔を大きな黒目が覗き込む。
「ふふっ、一松兄さん変わったよね」
トド松の笑顔が豹変し、探るような目つきに変わる。
「ユメと出会ってから」
「……なにが言いたいの?」
睨み返し応戦するジト目。