第26章 ※チョロ松エンド 僕を君に捧ぐ
(最低最悪だ…。せっかくの温泉旅行だというのに、このまま僕はトイレでチョロシコスキーしてフィニッシュを迎えるというのか…)
それはあまりにも悲しすぎる。ならばせめて寝顔だけでも拝もうと、そっと背中へにじり寄る。
すると、ちょうど覗き込んだタイミングでゆめ美が寝返りを打った。
「ぅわっ!?」
後ろにひっくり返り、ゴンと鈍い音を立てて柱に頭をぶつけてしまう。動揺しすぎてベタな反応をするチョロ松なのだった。
「いつつ…」
こぶを押さえながらも諦めずに這いつくばり、ついにゆめ美の寝顔へと辿り着く。
起こさぬよう、呼吸すら止めて覗き見れば、その寝顔にたちまち鼓動が速くなった。
(あの時も思ってたけど…)
枕元のルームランプが、艶めかしい灯りで愛しい寝顔を妖艶に彩る。
ぷるんとした唇、愛らしいまつ毛、きめ細やかな素肌、そして、はだけた浴衣から覗く鎖骨とうなじ。
「浴衣、本当に似合ってる。綺麗だよ」
眠っているから口に出来る台詞。
「こんな可愛い子が僕の彼女なんて…」
躊躇いがちにゆめ美の髪をサラサラと撫でた——刹那——黒い瞳がチョロ松を射抜いた。
「やっと来てくれた」
「え…っ!?」
ゆめ美が布団をめくると、体勢が崩れたチョロ松が覆い被さるようにしてゆめ美の上へ。
「あ、あの…っ!?」
「寝たふり」
「はえぇっ!?」
声が裏返るチョロ松が可笑しくて、ゆめ美はクスリと笑みをこぼす。
「だって、チョロ松くんいつまで経っても恥ずかしがって来ないんだもん」
「来ないって、そそそれって、つまり」
頭から湯気を立ててたじろぐチョロ松の腕を、ゆめ美は強く引いた。