第26章 ※チョロ松エンド 僕を君に捧ぐ
ここの陶芸教室は五十分作り放題で、作った中から焼く作品を自分で選べるらしい。
はじめは失敗続きな二人だったが、三十分を過ぎた頃にはようやく作品として残せるような出来ばえになっていた。
残り二十分、思い描いた器を作る為、一心不乱にろくろと向き合う。
「出来た!これどうですか?焼いたらどんな感じになります?」
顔を上げ、チョロ松がダビデさんを呼んだ。
「その形はお茶碗かな?焼くと少し小さいサイズになるけどいい?」
「はい!」
器を細い糸でろくろから切り離せば、ひとまず完成だ。
チョロ松は胸筋に見守られながら、器の底に糸を引き、形を崩さぬよう指で底を持ち板へと乗せた。
「では焼き上がりの色見本を用意するから、そのまま作業を続けててください。すぐに戻ります」
「分かりました」
返事をし、ダビデさんの背中を見送る。
と、ゆめ美はチョロ松の完成品を覗き込んだ。
「チョロ松くん上手だねっ!」
「ありがとう!ゆめ美ちゃんはさっきから何作ってるの?花瓶?」
何の気なしに聞いたチョロ松だったが、ゆめ美は俯いてしまう。
「どうしたの?すごく可愛い花瓶じゃん?」
「………湯呑み…の、つもり」
「あっ…!?ごごごごめん湯呑みだったんだ!確かに湯呑みに見え…なくもない……けど…」
ダメだった。
何度ガン見しても、チョロ松の感性では一輪挿し用の花瓶にしか見えなかった。
(胸筋さんいないし、僕が手伝うか…)
「——ええと、湯呑みならこんなに口を狭くしちゃダメだよ。ちょっといい?」
「う、うん…、お願いします」
「お願いされました」
照れ隠しでそう言って、ゆめ美の後ろへ椅子を持っていく。
後ろに座ると、チョロ松は二人羽織のような体勢になって手を伸ばした。
手伝ってあげたい一心で自らニューヨークの幻状態になっているのだが、勿論無自覚である。