第26章 ※チョロ松エンド 僕を君に捧ぐ
受付を済ませてからおっさんイケメンの指示に従い、二人は土が盛られたろくろの前に座った。膝に泥除けのタオルをかけて準備が整うと、おっさんイケメンも二人に向かい合うようにして作業台に腰掛ける。
「蛇尾出です。よろしくお願いします」
どうやら二人の担当は、この胸筋と腹筋の凸凹がTシャツ越しにセックスアピールしてくる、ギリシャ彫刻風おっさんイケメンらしい。
「では、私が作りながら説明するので真似してみてください」
おっさんイケメン(以下、ダビデさん)は頭のタオルを結び直し、ろくろのレバーを倒して回し始めた。そして、手に水をつけながら土の真ん中に親指で穴を開ける。
「まずは穴を開けてから、こうして親指と人差し指で土をつまみ、豆腐を触るくらいのソフトタッチで下から上へ引っ張ってください」
チョロ松とゆめ美もろくろを回転させ、見よう見まねで土の中心に親指を埋める。
「お二人ともお上手ですね!穴を開けてからは、均一な力で土を薄くしていくのがポイントです。まずは基本の湯呑みの形から——」
(いや教え方親切丁寧だけどさ、なんで話しながら胸筋ピクピクさせてんの?サービス?サービスなの!?)
などとチョロ松が胸中でツッコミを入れている間に、ゆめ美の土が形を崩しぐにゃぐにゃと歪んでしまった。
「あっ!すみません変な形になっちゃったんですけど…」
「じゃあ一度直しましょうか」
ダビデさんが立ち上がりゆめ美の元へ行くと、
「ちょっと待てぇぇえ!!」
警戒心剥き出しなチョロ松が牙を剥く。
「いいです!この子は出来る子ですから!頼むから後ろから抱きついてこねこねクリクリはやめてください!!」
「チョロ松くんなに言ってるの!?」
「あぁ、"ニューヨークの幻"は裏メニューですから」
「あんのかよ!!??」
とツッコミを飛ばしたところで、チョロ松の土も変な力が入って潰れてしまった。
「ああ!やっちゃった!」
「ふふ、大丈夫ですよ。じゃあ彼氏さんのも直しますね」
「…よ、よろしくお願いします」
ダビデさんの白い歯にほんのちょっぴりときめいたのはチョロ松だけの秘密だ。