第24章 チョロ松ルート1 病魔に侵されるシコ松
「そのケースですと、トリプルクリックのちに右クリック、リピート右クリックです。ええ、ダブルライトクリックと言った方が分かりやすいですかね?はい、はい、いえ違います。その場合はダブルクリックと見せかけて間隔をあけたシングルクリックで攻め抜きます。はい、そうです——」
十四松とトド松がいる思念の舞台はスタバァだ。
緑のスーツで眼鏡をかけたチョロ松が、スマホを耳に当てながらノーパソと愛パッドをいじっている。
その悲しき妄想の産物を、二人は呆れつつ眺めていた。
「……マジなんなのさっきから。ブラック工場で働いてた記憶を再現されたかと思ったらシコ松中の看板を粉々に破壊してるのを見せられて、その次はこれ?チョロ松兄さんどんだけ病んでんの?」
「末期だね!」
いつぞやの自意識ビッグバンを起こした時は、スマホやノーパソはダンボール製だったが、妄想の中では本物だ。本物の意識高い系ビジネスマンである。
「でもチョロ松にーさん生き生きしてるよ?」
「そりゃこの中では完全に一軍になりきってるからね。てかトラウマだか理想と現実だか知らないけど、こんなんずっと見てたらこっちまでメンタルやられるよ!」
「うんうん」
「もー!イライラするーー!!」
頭を抱えてストレスと戦うトド松だったが、
「……あ、でもさ」
急に何かを思いついたように顔を上げた。
「………ボクら十分頑張ったよね?だって三箇所も回ったんだよ?」
「うん頑張ったー!」
向かい合う二人の背景には、華麗にトリプルクリックを決める三男の姿。
「だからさ、もうすぐ三十分経つし、ここから出て休もう?モヤの中でみんなを待っててあげようよ!」
「わかった!」
「さっすが十四松兄さん話わかるぅ!じゃあ行こ!」