第22章 拍手御礼小話 だいじょーぶ!!
女子の愚痴を聞き慣れているトド松は、ゆめ美の話を親身になって聞いてやった。そんなトド松に、ゆめ美は気づけば本音をこぼしていた。
「…そっか。それで落ち込んでるんだね。でもボク、ユメはとっても頑張ってると思うな」
「あはは、頑張っててもカラ回りだよ」
俯くゆめ美に、トド松は人差し指をピッと立ててウインクした。
「大丈夫だよ。だって、店長とお店が大好きなんでしょ?その好きって気持ちがきっとお客さんにも伝わってるって」
「伝わってても、ミス連発してたら…むぐ」
トド松は人差し指でゆめ美の唇をふにと押す。
「ダーメ、マイナスなことばっか言っちゃ」
「あ…ごめん」
「それにダヨーンでしょ?平気平気。何考えてんのか意味不…中年男性は後を引かないって言うから!」
「中年男性は後を引かないって聞いたことないけど…でも、ありがとね、励ましてくれて」
ゆめ美が笑顔になったのを見て、トド松は「よし」と鼓舞するように声を発しながらベンチから立ち上がった。
「今夜は二人でゆっくりお酒でも飲んで元気出そっ?」
「いいこと言うねぇ!よーし行こーぜ!」
「へへっ、オススメのダイニングバーがある………え?」
ハッとしてトド松が振り返れば、そこには残酷な現実が待ち構えていた。
・・・
六つ子行きつけの大衆居酒屋にゆめ美の姿があった。そして、ゆめ美を囲むようにして座る同じ顔六人も。
(もうっ!せっかく二人きりだったのに!)
ゆめ美としっぽりダイニングバーでカシオレとカルアミルクというトド松の予定は大幅にずれ、七人でビールとつまみをつつくハメになってしまった。
ゲラゲラ楽しそうに笑いはしゃぐ五人の兄。それを見ているトド松はふくれっ面。そんなトド松を見て、ほろ酔い次男が末っ子の肩に手を回す。
「フッ、トッティよ、そんなに照れるな。心配になって探し出してくれた兄に感謝が溢れて止まらないんだろう?」
「照れてない顔近いイタイ離れて話しかけないで」
ゆめ美との時間を邪魔された今夜のトド松は容赦ない。