第22章 拍手御礼小話 だいじょーぶ!!
「やっぱり、おれ…ついてるかも」
「そうなの?」
「…だって……と、……あえ…た、から」
「もごもごなに言ってるの?」
ゆめ美が一松を覗き込んだ拍子に、一松はボフンと頭から大きな湯気を立てて立ち上がった。
「…じゃあ」
「え?帰るの?」
「…腹減ったからラーメン食う」
「あ、いいね!じゃあ愚痴聞いてもらったお礼に奢るよ!」
「…い、いいよ!一人で行くから…!」
ノソノソ歩き出す影にちょこちょこついて行くもう一つの影。一松は嬉しさと恥ずかしさがオーバーヒートし、逃げ出したい一心で乱暴に言葉をぶつけた。
「だからっ!一人で行くっつってんだろっ!」
「今なら餃子も付けちゃう!」
「送ってくから帰れって!」
「そっか、そんなに嫌なら帰る…」
ぴた、と一松の足が止まる。
「………いや…べ、べつに…嫌とかじゃ…ーーーーッ!!」
振り返って後悔するも時すでに遅し。ゆめ美は嬉しそうに満面の笑みを一松に向けている。
「よかった!嫌じゃないんだ!」
「もういいっ!帰るっ」
「待って待って、一松!」
闇夜に咲く笑顔の花は、二輪並んで咲き誇っていた。
一松の場合 完