第22章 拍手御礼小話 だいじょーぶ!!
(一松、どうして私が悩んでるって分かったんだろう?)
「あのね、恥ずかしい話なんだけど——」
猫と仲良しだし、動物の勘でも働いたのかもなんて思いながら、ゆめ美は愚痴をこぼした。
「——っていう事があってさ、ここで反省してたの」
「……」
話を聞き終わり、しばらく押し黙って考え込んでいた一松だったが、
「…甘いね」
「甘い?」
「それくらいで落ち込むとか、甘い」
ハーフパンツのポケットに手を入れ、つらつらと語り出す。
「おれなんか、今朝四時四十四分四十四秒に起きたし、二度寝したらおれの鮭食われてたし、釣り堀行ったら十四松釣れたから…」
「なんかよく分かんないけど、十四松くん釣れたのはすごいね…」
驚愕の表情を見せるゆめ美に、一松は得意げに口角を上げた。
不幸自慢は止まらない。
「それに、急いでトイレに行ったらチョロ松兄さんに先越された挙句紙無かったし、兄弟でカリカリ君ソーダ味食ったらクソ松が当たり引くし、猫にあげるにぼしおそ松兄さんに全部食われてたし、銭湯で長風呂対決したらトッティと三秒差で負けるし——ね?おれに比べたらマシだから…」
「ふふっ、ありがとう。楽しい話聞いてなんだか元気出てきたよ」
一松の話から、六つ子のゆるりとした日常を垣間見られ、ゆめ美の心が癒されていく。
笑顔が戻ったゆめ美と目が合うと、「でも」と一松は付け加えた。