第22章 拍手御礼小話 だいじょーぶ!!
三つの案が全てボツになってしまい、チョロ松はしゅんと眉尻を下げた。
「あははっ、僕ちっとも役に立ってないね」
己の不甲斐なさにポツリと謝ると、隣のゆめ美は何故かニコニコしている。
「そんなことないよ!話しててすごく楽しくて元気出たもん!」
「楽しい?呆れたの間違いじゃない?」
ふるふる首を振るゆめ美。
「楽しかったよ!また頑張ろうって思えたし!」
「そう…、ならよかった」
(元気が出たなら何よりだけど、僕カッコ悪。こんなんじゃ全然異性として意識して貰えないよ…)
恋心を抱くと、些細なことで一喜一憂するものだが、チョロ松はまさに今その状態だ。
(また手を繋げるかなって思ったけどムリ。絶対ムリ。この空気で自分から行くとかないない)
「ね、チョロ松くん」
「ん?どうしたの?」
「うちこっちだよ?」
「うわぁぁっ!?」
ボーッとして何故か他人の民家に入りかけたチョロ松の腕を、ゆめ美が慌てて引っ張った。
「あははっ!チョロ松くんてもしかして天然?」
「そんなことないよ!天然キャラなんかじゃないっ!」
チョロ松は赤面で返すと、ゆめ美に向き直った。
「ち、ちゃんと覚えてるから!ゆめ美ちゃんちを忘れるわけないから!」
必死に雄弁を振るう、チョロ松。
そして、自身の左手とゆめ美の右手を結んだ。
「チョロ松くん?」
途端、ゆめ美の顔も赤くなる。
(やった…やった、やったよ…!繋げた…自分から僕、手を繋いだんだ…!)
「僕が天然じゃないことをしっかり教えてあげる。金輪際間違えないから僕についてきて。勿論ノーヒントでね」
「う、うん、じゃあよろしくね!」
名誉挽回を図るチョロ松だったが……———
「チョロ松くん、ここどこ?」
「ハハッ、近道だと思ったんだけど道新しくなってるのかな?アハハハ…」
結局、溢れ出すロマンティックにチョロ松の思考は掻き乱され、ゆめ美の家に着いたのは町内二周した後だった。
その頃にはゆめ美の悩みもすっかり晴れていた。
チョロ松の場合 完