第22章 拍手御礼小話 だいじょーぶ!!
二人で夜の街を歩くのはトランプで遊んだ日以来だった。
チョロ松はどことなく元気がないゆめ美を慰めようと、兄弟のいびき話を面白おかしく話す。
「——そこで僕は全員の鼻をつまんでみたんだ。それでもいびきが聞こえ続けんの!どんなホラーだよって話だよね!」
「へぇーっ、ほんと不思議だね」
ゆめ美が僅かに笑顔になったのを見て、チョロ松は内心ホッとした。
(そろそろ聞いてみても平気かな…)
元気がなかった原因を自分の力でなんとか出来るかもしれない——そう思い、チョロ松はほんのちょっぴり勇気を出した。
「ねぇ、さっきまで元気なさげだったけど、何かあったの?」
「え?あぁ、仕事でミスしちゃってね、一人で反省してたんだ」
「ミスってどんな?」
「ダヨーンが口癖のお客さんの顔にぶつかって、思い切りナポリタンかけちゃってさ。私ってダメだなぁって思ってたの」
この瞬間、チョロ松の中に新品卒業へ向けたミッションが発生する。
(よし、ここで落ち込む彼女を紳士的に慰め、かつ頼りになって優しくて気が利く男チョロ松アピールだ。そうすれば、あのバカ共からまた一歩リード出来るはず!)
バツの悪そうに笑うゆめ美に対し、チョロ松は元気付けるように明るい声で返した。
「大丈夫だよ!元気出して?失敗は成功の元なんだから。もうぶつからないように"ダヨーン注意"って立て看板作ってあげるよ!」
「そこまでしなくていいよ!?」
「じゃあセンサー付けるとかは?半径三十センチ以内にちかづくとダヨーンって鳴るとか」
「うーんそれもいいかな」
二つの案を却下され、顎に手をあて悩むチョロ松。と、人差し指をピッと上げて第三案を提示した。
「分かった。僕がダヨーンの顔の前に立って交通整理してあげる」
「……気持ちだけで十分です」
「そ、そう…」