第22章 拍手御礼小話 だいじょーぶ!!
おそ松の場合
「よっ、ゆめ美ちゃん!」
「おそ松くん…」
「こんな時間に何してんの?」
おそ松はにししと笑いながら、ベンチに座るゆめ美の隣にドカッと腰掛けた。
「ちょっと考え事してたの」
「ふーん。でも夜の公園に女が一人とか危なくない?襲われても知らないよー?俺に」
「あははっ、気をつけます!おそ松くんは何してるの?」
「あぁ、俺はチョロ松と喧嘩したから一人チビ太しようかなって。ゆめ美ちゃんも行っちゃう?」
おそ松は頭の後ろで手を組んで、白い歯を見せニーッと笑った。
"一人チビ太"に先ほどの"一人反省会"を重ね、面白くなってゆめ美は笑みをこぼす。
「ふふっ、チビ太くんのおでん食べたことなかったし、行ってみようかな」
「えぇっ!?ここに住んでてあのおでん食ってないとか人生損しまくってるって!じゃあ行こうぜ!」
「わっ!」
立ち上がり、当然のように手を繋ぐおそ松。ゆめ美は積極的なおそ松に未だに慣れずオドオドしてしまう。
「あ、あの!」
「ん?なに照れてんの?一松のフルチン見た仲じゃん?」
「それどんな仲!?」
旅館で一松と過ごしたあの時間を思い出し、ゆめ美の顔が真っ赤になる。
「おそ松くん、もしかしてあの時!」
「あの時?みんな捕まって地下室にいた時がどーかしたか?」
「あ……なんでもない」
「んな照れんなって。一人三ページしかないんだから早くぅ〜」
引きずられるようにして、ゆめ美はおそ松とハイブリッドおでんへと向かった。
・・・
初めて暖簾をくぐったハイブリッドおでんにゆめ美は目を爛々と輝かせた。黄金色のつゆの中、おでんがコトコト煮えてるのを見て、思わず感嘆の声を漏らす。
「わぁ…おいしそー!」
「らっしゃい。おぉ!ゆめ美ちゃんじゃねーか!おそ松オメェ上手いことやったな?羨ましいぞコンチキショー!」
「へへっ、いーだろーーっ」
おそ松とチビ太は、互いに青鬼の一件には触れず何事もなかったかのように振る舞う。六つ子とイヤチビの因縁は、たとえ死んでも次の週には生き返る、ご都合主義万歳なギャグ特有のリセット関係なのである。
おそ松はゆめ美を先に座らせてからビールを注文した。