第19章 ※アンケート回 松怪奇譚〜解〜
目が点になったゆめ美を見て、一松は猫背を向けて、ドアへと向かう。
「ちょっと、鬼に食われてくる」
「ま、待って待って!?隠れよう!早くいちぼに隠れよう!?」
スベったまま生きるよりも死を選んだ一松だったが、ゆめ美の腕がそれを許さない。がしと一松の手を引き、急いでクローゼットに隠れた。
ドアが壊されたような破壊音がしたのは、二人がちょうどクローゼットを閉めた瞬間だった。
歯の根が合わないゆめ美は、震える肩を必死に押さえる。
一松は、ぼくが守るから——とはさすがに言えなかったが、代わりに肩を抱いてやった。もしイチボがバレた時は、自分一人で戦おうと覚悟を決める。
(ケッ、ホントらしくねぇ…)
こんなに積極的になっていることに、誰でもない一松自身が驚きを隠せないでいた。
耳を澄ませば、青鬼がペタペタと歩き回る音が聞こえてくる。近くなったり遠くなったり、部屋の中を何度も往復しているようだ。
暗闇で視覚が遮断されたことにより、聴覚が研ぎ澄まされた二人は、外敵から身を隠す猫のように息を潜め、身体を密着させた。
一松のこめかみから汗が滴り落ちる。
(し、死ぬ…確実に…)
敏感になっているのは聴覚だけじゃない。
超絶至近距離で恐怖に身体を震わせるゆめ美。
そのゆめ美から香る、シャンプーやら汗やらが混ざった甘い甘い匂いは、童貞の嗅覚には刺激が強すぎた。
酔ったように頭がぐるぐると回り始める。