第19章 ※アンケート回 松怪奇譚〜解〜
暗闇の中、探るように見つめ合う。
「ねぇ」
「なぁに?」
「…………ゆめ美…………って、呼んでもいい?」
「そういえば、名前で呼ばれたこと一度もなかったね」
ふふっとゆめ美は笑みをこぼす。
「いいよ。じゃあ、私も一松って呼ぶ」
「いやそれはいい。恐れ多い」
「何言ってんの。一松」
「っ!!」
一松は、初めての呼び捨てにどくんと鼓動が飛び跳ねる。
もう思いが溢れて爆発寸前だ。
「…ゆめ美…」
「一松」
確かめるように名前を呼び合う。
カーテンから漏れる月光が二人の瞳を煌めかせる。
(触っても…嫌われない…かな)
震える指先がゆめ美の頬をつうと撫でると、ゆめ美は拒まずに目を閉じた——刹那、
ダンダンダンダンダンダンッ——と、激しくドアを叩く音に、二人は容赦なく現実へと引き戻された。
「なに!?」
「チッ、あいつだ。イチボに隠れないと」
「いちぼって?」
「一松ボックス…略してイチボ…またの名をクローゼット」
「は、はぁ…」