第19章 ※アンケート回 松怪奇譚〜解〜
一松は、気づいてやれなかった自分が恥ずかしくなった。
(ホントはずっと怖かったのに、心配かけないように笑ってた…?)
「…怖いの?」
「怖くなんかない」
見え透いた嘘を吐き、慌ててゴシゴシ目を擦るゆめ美。
「埃が目に入ったの」
「その常套句、クソつまんないから…」
本心とは裏腹に皮肉を吐く。
「そんな言い方しなくても…」
「……バレてんだよ」
「っ!?」
一松はたまらなくなって、ゆめ美を腕の中に閉じ込めた。
言葉に出来なくても、好きって気持ちを沢山込めて、強く強く抱き締めた。
(顔から火が出そう…燃えないゴミのくせに)
いつぞやのクリスマスのように、人体自然発火したらどうしようと不安になるが、今度のは嫉妬ではなく恋の炎。
「……これで、怖くないでしょ?」
なんだこれ、って一松は思った。こんなの自分のキャラじゃない。兄弟にバレたら即刻命を絶とうと胸に刻む。
「うん…あ、ありがとう」
「チッ」
「どうしてこのタイミングで舌打ち?」
「べつに」
随分とねじれ曲がった照れ隠しである。
嫌なのかな?と思ったゆめ美だったが、優しく背中に腕を回され、すぐに思い直す。
(一松くん、本当は恥ずかしいのに私を安心させようとしてくれてるんだ…)
優しさは誤魔化せない。言葉にしなくても互いの心は寄り添っている。
浴衣の薄地越しに二人の体温が溶け合う。激しく脈打つ二人の鼓動は、きっと怖いからじゃない。
ゆめ美もそっと腕を回すと、一松が口を開いた。
「なんか…甘い」
「甘い?」
「なんなの?この甘い雰囲気?ありえない」
「そう言われると、物凄く恥ずかしくなるから言わないで」