第19章 ※アンケート回 松怪奇譚〜解〜
カラ松を演じることに熱が入って己を見失っていたが、気づけばゆめ美の肩を抱いていた。
(みみみ密着してるうぅぅうぅぅう!!??)
刹那、一松は幽体離脱して三途の川を渡った。向こう岸の花々が優しく咲き誇っている。赤塚先生が手招きしている。河原で子供が石を積み上げている。
一松も石を積み上げようとしゃがんだところで、あの世から現世(うつよ)へと引き戻された。
「あははははっ!!」
引き戻したのは、ゆめ美の笑い声だった。
「ぜんっぜん似てない!ふふっふふふ…!」
笑いが収まらず肩を震わせている。
「ふふっ、ありがとう!やっぱり一松くんは優しいね」
笑いすぎて出た涙を拭い、微笑むゆめ美。
「怖がらないように笑わせてくれたんでしょ?もう大丈夫。怖くないよ」
「い、いや…その……今のは、悪霊に憑依されて…」
慌てて肩から手を離した時、何かが指に引っかかると、ゆめ美の背中からパチンと音がした。
「っ!!」
「…あ?なに今の?」
ゆめ美は胸元を隠しながら消え入りそうな声で話す。
「背中…さっき、蜘蛛になった女将さんに引っ掻かれて…」
「引っ掻かれて?」
「浴衣を切り裂かれた時、怪我はしなかったんだけど…ブラも切られてたみたい…」
一松は気づいていなかったが、露出していた背中に触れ、壊れかけていたブラホックにとどめを刺してしまったらしい。
(おぉ、神よ…全知全能の神よ……)
一松は己の運命を呪った。
裏は荷が重すぎる——と。