第18章 アンケート回 松怪奇譚〜追〜
「ホラホラホラ…お客様、お気をつけください。部屋の鍵を落としてましたよ」
「っ!!」
ビクッとゆめ美の手が震える。
ぬらっと現れたのは、笑い声が独特なこの旅館の女将だった。
薄暗い廊下からヒタヒタと足音を立てずに近づいてくる、半分透けたミイラのような老婆。
(こっわ……)
チョロ松は思い直した。どこもエンターテインメントなんかじゃない、と。
「ぁ、ありがとうございます」
律儀にお礼を言い、ゆめ美はからくり人形から鍵を受け取った。
「でもよかった…女将さんだったんですね」
ゆめ美は「誰にも見つかるな」というおそ松の言いつけを忘れ、不覚にも安堵してしまっていた。
チョロ松はずいと一歩踏み込み、不満を包み隠さず女将へとぶちまける。
「いや全然よくないよ!?真夜中の廊下でからくり人形とか、もはや演出通り越して悪意のある嫌がらせでしかないから!!女将さん、いい加減にしてくださいよ!」
「チョロ松くん!そんな言い方しなくても!」
「止めないでゆめ美ちゃん。僕は今、モーレツに怒りが込み上げているんだ」
強気なクレーマーと化したチョロ松は、腕を組み威圧的に女将へと詰め寄った。