第18章 アンケート回 松怪奇譚〜追〜
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「ハァ…ハァ…と、とりあえずはもう、平気…かな…」
「うん…ちょっとだけ、休憩させて…」
息を切らし、前かがみになって膝に手をつくチョロ松の隣で、ゆめ美は壁に背中を預け深呼吸した。
無我夢中で走り、気づけば玄関まで戻ってきていた。
(そうだ。トッティは…)
ゆめ美は先ほどまで隠れていた瓦礫の陰を見た。けれどそこはもぬけの殻。
「チョロ松くん、トッティがいなくなってる!」
「えぇっ!?」
チョロ松も瓦礫を覗き弟を探した。が、やはりいない。
「あいつ怖がりなくせに、一人でどこ行ったんだろう?」
「もし青い鬼に捕まってたりしたら…!」
「大丈夫、それはないよ!トド松のことだからきっと上手く巻いてるって!それか言いくるめて仲間にしてるかも!」
発言に根拠なんて無かったが、ゆめ美を元気付けるためにチョロ松は無理して笑顔を作って見せた。そんなチョロ松の優しさに、ゆめ美も弱々しく笑顔を返す。
「そうだよね。きっとそう。信じるしかないよね。絶対みんなでここから出られるって」
「そうだよ。こうなったら怖がらずに楽しもう!幽霊や妖怪の類いはさ、僕的にはエンターテインメントだと思ってるから」
「エンターテインメント?」
小首を傾げるゆめ美に向かい、チョロ松青年は得意げに人差し指を立てる。
「そう。テレビでやってる心霊特集なんて、ほとんどが作り物でしょ?デジタル化した現代なら誰でも加工出来ちゃうし。一昔前のVHSやアナログカメラの時代は独特の不気味さがあったけどさ。最近は画質がいいから、いかにも合成感がハンパないんだよね」
カタカタ…
「だから、僕が心霊特集を見る時は、作り物前提で楽しんでるんだ。だっておかしいと思わない?なんで幽霊がカメラ目線なの?どんだけ待ち構えてんのって、観てるこっちがツッコミたくなっちゃうよ」
カタカタカタ…
「まぁ、怖くなくなったというより、心霊写真や心霊動画が出回ってて、耐性がついたのかもしれないけどさ。さっきの怪異も、冷静に考えればきっと中に人が入ってるだけだよ。まぁ、逆に人の方が怖いよね。何がしたいのって感じだし」
カタカタカタカタ…