第18章 アンケート回 松怪奇譚〜追〜
扉の先は階段だった。
だが、望みの二階ではなく下へ続いている。
地下からは禍々しい空気が立ち込めており、覗き込んだだけで咽せ返りそうになった。
けれど——絶対に何か手がかりがある——そう確信した二人は、震える手を硬く結びゆっくりと階段を下りて行った…。
階段を下りた先には、真っ白な扉。
チョロ松が先頭に立ちゆめ美に目配せすると、ゆめ美もゆっくりと頷く。
ダメ元で南京錠を手に取ったチョロ松だったが、鍵はかけられてなく、ゴトリと音を立てて床に落ちた。恐る恐る、慎重に扉を開く。
「……っ!!」
飛び込んできたありえない光景に、二人は呼吸をするのも忘れ、金縛りのように全身が硬直した。
「……なに…これ…」
「ゆめ美ちゃんっ!」
恐怖と対峙し、意識を手放しかけたゆめ美の身体をチョロ松が支えた。
視線の先には、鉄格子。
そしてその奥には——
「まさかとは思ってたけど、こんなのが本当にいるなんて…」
人のような姿(おそ松達が遭遇したものと同じタイプ)をしたのもいれば、ウネウネと触手を生やしているもの、巨大なスライム状で無数の目をギョロギョロと動かしているものもいる。
姿形は違えど、そのどれも身体は青く、頭には角、身長はゆうに三メートルは超えている。
ゆめ美とチョロ松の姿を見るや否や、"青い鬼"達は大きな目玉を一斉に二人に向け、破壊する勢いで鉄格子をガタガタと揺らし始めた。
けたたましい金属音が部屋に響き渡り、鼓膜に痛みが走る。
チョロ松はすかさずゆめ美の手を取った。
「ヤバい、逃げよう!これは本気でヤバいって!」
「う、うんっ!!」
異形のもの達から容赦なく視線が注がれる中、勢いよく扉を閉め、施錠して階段を駆け上がる。
厨房へ戻ってきても金属音は止まず、いつ青い鬼達が追いかけてくるか分からぬ恐怖から逃れようと、二人はひたすら廊下を走った。