第18章 アンケート回 松怪奇譚〜追〜
不安と恐怖を拭うように、ひそひそ声で会話をしながら廊下を歩く二つの人影は、例の掛け軸を通り過ぎ、厨房らしき部屋に差し掛かった。ドアが壊れて中が丸見えである。
ゆめ美を背中に隠し、チョロ松は壊れたドアの隙間からひょこっと顔を出して中を覗いた。
中は薄暗く、シンクの蛍光灯が不気味な青白い光を放っていた。
例えるならば、街灯のない路地にポツンと自販機がある、あの感じである。
(ここも誰もいないか。こんなにウロチョロしてるのに女将さんすら出てこないし、やっぱり僕らは意図的に閉じ込められてるのかも…)
人がいないのを確認した後、もしかしたら奥に階段があるかもしれないので中を探索することに。
が、入って早々に二人は後悔した。
「チョロ松くん…足元」
「……不衛生とかのレベルじゃないね」
厨房の床にはところどころ血が付着していた。カピカピに乾いて赤黒くなっているので最近のものではない——つまり、六つ子のではなかった。
血の跡はそのまま冷蔵庫、食品庫と書かれた二つのドアに向かって伸びている。開けない方がいろんな意味でよさそうだ。
一番気になるのが血を踏んで出来たであろう足跡だ。そこら中に点々と残っている。足跡は奇妙なことに、血の色と青を混ぜたような不気味な色をしている。