第18章 アンケート回 松怪奇譚〜追〜
おそ松達が怪物に追われている頃、ゆめ美達は瓦礫をどかし、玄関から脱出しようと奮闘していた。
だが、結果は…
「あぁん、重くてムーリー!」
「男のくせに妙な声出すな」
「ダメだね。こっちもビクともしない」
ご覧の通りである。
コンクリートの破片や、折れて釘が突出した木片の山に対し、素手でどうにかしようとした三人はいささか無謀だった。
ゆめ美は圏外のスマホで時刻を確認する。
「もう十一時過ぎたのに、おそ松くん達戻って来ないね…」
二十分ほど前、二階から聴こえてきた衝撃音は凄まじいものだった。
まるで大砲でも撃ち込まれたかのような地響きに、三人でしゃがみ込んだほどだ。
不安が拭えないゆめ美は、唇を噛み締め膝を抱える。隣に座るトド松も真似っこして同じポーズで俯いた。
「ねぇチョロ松兄さん。さっきのすごい音、もしかして兄さん達瓦礫の餌食になったんじゃないかな…。ぺしゃんこになってたりして」
「あいつらの逃げ足を信じるしかないよ。つか何なのこの状況?なんで楽しい旅行がこんなことになってんの?」
視線を床に向けたまま、物憂げにぽつりとゆめ美が言った。
「私達、館長に呪われちゃったんだ。きっとここには青い鬼がいて、私達を食べようとしてるんだよ…」
「もうやだ……自殺した館長にとり殺されるぅ……っ!!」
ゆめ美は、自分の横でガタガタ歯を鳴らすトド松の背中をさすってやった。まるで弟みたいだな、なんて思いながら。
チョロ松はゆめ美とトド松の不吉な言葉に息を飲む。
「あのさ、呪いって何?あと…青い鬼って?」
「さっき、廊下の向こうに人を食べる青い鬼の不気味な掛け軸があったの。それに、私とトッティが読んだブログには——」
ゆめ美が話し終わるや否や、恐怖が臨界点に達したトド松は、天井を仰ぎ指を組んで赤塚先生に祈りを捧げ出す。ぶつぶつと口の中で無意味なことを唱える弟を聞き流し、チョロ松は腕を組んで冷静に分析を始めた。