第18章 アンケート回 松怪奇譚〜追〜
「何あれ?ありえないでしょ?」
「とりあえず事実を受け入れろ!女将さんが透けてる時点でこの旅館はありえなかった!」
ロビーに戻り、二人は階段を駆け上る。
一松が先に上がりおそ松があと一歩というところで事件は起きた。
青い怪物が拳を振り上げ壁を思い入り殴ると、ガシャーーンッと鼓膜が痺れるような音と共に粉々に壁が砕かれた。
「えぇぇえー!?なんだよそれ!!」
階段を塞がれ、おそ松は後退を余儀なくされる。
「おそ松兄さんっ!?」
二階へと続く階段は玄関同様瓦礫の山と化し、一松の前から兄の姿が消えた。
崩れ落ちた壁に手をつき、大声で名前を叫ぶ。
「おそ松にーさんっ!!無事なのーー!?おそ松にーさんっ!!」
普段あまり声帯を使わないので、それだけで息切れを起こしゼェゼェと肩が上下する。
と、遠くから兄の声が聞こえてきた。
「いちまぁーーつ!!上手いこと巻くからお前も逃げろ!!おい青いの!こっち来んなって!!」
声が段々遠くなっていく…。
「なんだよこれ…意味わかんない」
遠ざかる兄の声。瓦礫を眺め呆然と立ち尽くす。
(でも、おれが今すべきことは…)
——玄関以外の出口を見つけ、兄弟やゆめ美と合流し、一刻も早くこの旅館から脱出する——
己に課せられた使命を導き出すと、辺りをキョロキョロと伺いながら、もくもくと煙を立てて猫に変身した。
単独行動ならば臆することなく猫に変身出来る。
(ひとまず、下に戻る別の階段を探さないと…)
猫松は、みんなの無事を祈りながら俊敏な脚で廊下を蹴った。
・・・