第18章 アンケート回 松怪奇譚〜追〜
「べつにいいんだよ?兄弟や他人に嘘をついても。お前がそうしたいならさ。でもな…」
弟のボサボサな頭をポンと撫で、一言。
「自分には嘘つくなよ?」
「…嘘なんか、ついてないっ」
「あ、そう。じゃあ俺がカラ松と十四松見つけ出して、ご褒美にゆめ美ちゃんとディープキスしながら混浴でイチャコラしてもいいわけ?」
「だから、す、好きにすればいいだろ!おれには、関係ないっ!!」
プイとそっぽ向いた猫松のほっぺを、おそ松はからかうように指でぷにぷにする。
「なにムキになってんだよぉいちまっちゃーん?ただの冗談じゃーん?あれぇ?ムキになるってことはもしかして……っておい!置いてくなって!」
カァッと顔が熱くなった一松は、兄の手を払いのけてスタスタとロビーへ戻って行く。
(おそ松兄さんに何がわかんだよっ!!)
嘘だか何だか知らないけど、クソな自分にはどうすることも出来ない。クソにはゆめ美を好きになる資格なんてない。クソがクソを自覚し、なるべく人に迷惑をかけぬよう、ひっそりと一人で生きているならそれでいいだろべつに——と、ネガティブモードになっていくと、胸の中に行くあてのないモヤモヤとした感情が溢れ出す。
(嘘つくなって?じゃあ、『人類最強のクソですけど毎日かまってそして可愛がってくださいよろしくニャー』とでもあいつに言えって?)
自分を偽らないまっさらな心は、兄弟一寂しがりやな甘えんぼだった…。
(……え?なに今の?今のなに?おれこんなこと思ってたの!?なんだこのキャラ!?万死に値すんだよぉぉおおお!!!!)
飽くなき自虐徹夜コースに入りかけたところで、一松は自分の置かれている状況を思い出した。
兄弟二人が失踪したのに、呑気にネガティブしてる場合ではない。