第17章 アンケート回 松怪奇譚〜鬼〜
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おそ松がそれを拾い上げると、ゆめ美はその場にぺたんと座り込んだ。
「…どうして…」
持ち主と離れ離れになった、ヒビの入ったサングラス。
一松は光の宿らない瞳で兄のサングラスを見つめている。
「……まだ、分からないでしょ」
そう言って、そのまま視線をサングラスから玄関を覆い尽くす壊れた壁や家具でできた瓦礫の山へ向け、続けた。
「あのクソが、玄関の瓦礫の中で生き埋めになってて、臓器に骨や割れたガラスが刺さって呼吸困難になりながら黒っぽい血を口から垂れ流してるとは、まだ決まってないから」
「いやぁぁあ!!カラ松くーーんっ!!」
悲痛な叫び声を上げるゆめ美を見て、チョロ松は一松を半眼で睨み据えた。
「お前、この状況を楽しんでるだろ。絶対」
「……べつに。つかグラサンが瓦礫から随分離れた場所に落ちてるっつーことは、生き埋めよりここから急いで逃げたって考えるのが妥当じゃない?」
「うーん」
チョロ松は顎に手を当て考え込む。
「そう、だよね…。おそらく十四松も一緒だろうし、巻き添えになった可能性は低いと見ていい。それよりも玄関がこんな状態なのに誰も来ないってなんなの!?女将さんも従業員も誰もかけつけないとかおかしすぎる!」
「……まるで、ボク達をここから出さないように閉じ込めたみたい……」
ポツリ、とトド松が言った。
言ってしまった。
敢えて誰も口にしなかった、最悪のパターンを耳にし、みんな黙り込んでしまう。