第17章 アンケート回 松怪奇譚〜鬼〜
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「あー!トド松何やってんだよぉ!」
「どうした末端コンビ?ラリーが全然続かないねぇ!」
「フッ、やんちゃなブラザー達だ…」
卓球場から聞こえるはしゃぎ声に耳を傾けながら、カラ松は大浴場の入り口に掛けられた姿見で己の浴衣姿に酔いしれていた。
チラっと胸元をはだけさせ、マンインザミラーにウインクを飛ばす。
「ゆめ美、オレの胸、いつでもあいてるぜ?」
決め台詞の後、クルッとターンし今夜の予行練習を終えたところで、廊下で仁王立ちしている十四松に声をかけた。
「なぁ、十四松」
「前よーし!」
十四松は、鎧を身につけ手には釘バット。重装備で見張っている。
「十四まぁーつ?」
「後ろよーし!」
と言って、太腿の間から顔を覗かせたところでカラ松と目が合った。
「カラ松にーさんよーし!」
「…ブラザー?」
「なーにー?」
ぎゅるるんと回転し、カラ松の目と鼻の先に移動する。
「ち、近いぞブラザー。言っとくがオレの唇は先約がいるん」
「先発?スタメンーー!?」
ずずずと顔を寄せる弟を、カラ松は優しく引き剥がした。
「落ち着くんだブラザー。なぁ、オレは霊とかオカルトの類はあまり信じていなかったんだが…………この旅館、何か臭わないか?」
「におい?クンクン、うん、ヤバイね!!」
「そうだろ?オレの第六感もさっきからビンビン……ってホントに!?」
「うん!すっげー生臭い!あっちとか!」
「なっ、生臭い!?」
十四松が指をさしたのは、青鬼の掛け軸があった方角だった。
「なるほど…ビンゴーー?」
「えーーっ?」
「いや、なんでもない。……なぁ、ゆめ美が出てきたらブラザー達に預け、二人で向こうを」
見に行かないか?——と言い終わらないうちに、十四松は掛け軸がある廊下めがけて駆け出した。
「生体反応!!ブゥゥウウウン!!」
「話聞いてーー!?なんで一人でそっち行くの!?」
「なんかいたー!」
「えぇっ!?待つんだ十四松!一人で行っちゃだめだぁ!」
あまりにも危険な行動に出た十四松を止めるべく、カラ松も全速力で追いかけて行った。
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