第17章 アンケート回 松怪奇譚〜鬼〜
豪華な夕食を済ませ、七人は部屋に戻ってきた。
ホラー要素満載なこの旅館だが、客室と食事は申し分ない。旅館であと重要なものといえば…
「ゆめ美ちゃあん!背中流しっこしよーよー!!」
温泉である。
「一人で入るから、先にみんな入ってきて」
「わかった。お前ら先入ってきてー」
「呼吸するように下衆を発揮するな。頼むから」
チョロ松がおそ松の首根っこを掴み引きずる。
「んだよシコ!離せっ!」
「あのさ、ゆめ美ちゃん先に入ってきなよ?僕ら待ってるから」
子猫のように首を掴まれたおそ松が可愛くて、ゆめ美は堪えきれず笑い声を上げる。
「あはははっ!私時間かかるからみんな先にどうぞ」
「でも、ヤローが入った後なんて嫌でしょ?」
「そういうの気にしないから大丈夫」
「ダメ。僕が気にするよ。お先にどうぞ」
「ううん、お腹いっぱいで苦しいからちょっと横になってるよ」
「そ、そう…ごめんね」
申し訳なさそうに眉尻を下げるチョロ松に、ゆめ美は「荷物の整理したかったし」と付け加えた。
こうして、おそ松の願望は叶えられることなく、六つ子が先に入り、その後ゆめ美が一人で入浴する流れとなった。
だが、カラ松は掛け軸を見てからというもの、警戒心を解くことが出来ずにいた。こんな薄気味悪い旅館でゆめ美を一人にするなんて心配で仕方がない。
部屋は鍵をかけられるからまだいいが、温泉は鍵がない上に無防備な姿になる。一緒に混浴に入って用心棒出来るならそれに越したことはないが、生憎とゆめ美はそこら辺ガードが固い。
そこでカラ松は、ゆめ美が入浴中に大浴場の入り口の見張りをすると申し出た。するとすかさず、十四松もボディーガードを志願する。
十四松もまた、女将に対し不信感を抱いていたのだ。
ゆめ美を一人にしたくなかったのは他の兄弟も同じだったようで反対の声は一つも上がらなかった。むしろ全員ボディーガードを名乗り出たのだが、話し合った結果、カラ松と十四松が見張り役になり、他の四人は大浴場のすぐそばにある卓球で遊びながら待つこととなった。