第17章 アンケート回 松怪奇譚〜鬼〜
ゆめ美は上目遣いでカラ松を見つめた。
(か…わいい…)
手を繋ぎ、微笑みを浮かべるハニーはカラ松にはあまりにも魅力的すぎて。
夕食の前にキミの唇を味見したいとか、カラ回りしそうな台詞を吐きかけ慌てて飲み込む。
「…部屋に戻るまで、こうしててもいいか?」
「う、うん。じゃあ、お願いします…」
ゆめ美は、照れくさそうに頷いた。
拒絶されなかったことを安堵しカラ松も頷くと、ゆめ美の歩調に合わせ、ゆっくりと歩きだす。
繋いだ手の指を絡ませて俗に言う恋人繋ぎをすれば、二人の顔はみるみる熱を帯びていく。
今言うべきことじゃない。
そう思ったのに…。
「なぁ、憶えてるか?ずっと前にも、こうして——」
ゆめ美はキョトンと首を傾げている。
「ずっと…前?」
(やはり、忘れてるか…)
カラ松は胸中で呟き、はぐらかした。
「いや、なんでもないさ」
「?」
二人は気がつかなかった。
廊下を進む二人の背中を、暗がりからじっと見つめる異形のモノの存在を…。