• テキストサイズ

おそ松さん〜恋セヨ松野さん〜

第16章 アンケート回 松怪奇譚〜序〜




「なんか、すごく雰囲気のある旅館だね」


車から降りて、最初に声を発したのはゆめ美だった。

木々が生い茂る山中、ひっそりと旅館は佇んでいた。由緒ある木造建築だが、所々壁にヒビが入り、屋根の瓦が取れている。こんな状態で修復されず放置しっ放しなのが気になるところだ。

その不気味な雰囲気に圧倒され、案の定トド松はゆめ美の腕に引っ付いている。


「ケケッ、なにせ老舗旅館だからな。壁のヒビだって味があるだろバーロー」

「いやチビ太、足ガクガクしながら言っても説得力無いから。つかさ、古いなりに小綺麗にしておくもんじゃないの?玄関に蜘蛛の巣張ってるとかどうなの?」


と、チョロ松が不満を口にすると、他の兄弟達も頷いた。だが、一松だけは嬉しそうに壁のヒビを見つめている。


「…おれはこういうの、嫌いじゃない」

「まぁお前が棲みつきそうな雰囲気ではある」


ニタニタ笑う一松を半眼で呆れながらチョロ松が見ていれば、視界の端、いつの間に現れたのか玄関に人影が一つ。


「…幽邃(ゆうすい)の地にある吐奇話旅館まで、ようこそおいでくださりました…」


頭を深々とさげてこちらにやってきたのは、一人の老婆であった。

紫の着物に黄色い帯は、着崩れてヨレヨレ。血の気のない青白い肌に充血した目。真っ白な白髪は結ってお団子にしているが、ボサボサでとても客商売をやっている身なりには見えない。


「ヒィッ!?」


老婆の気味の悪い風貌に怖気付き、トド松はすかさずゆめ美の背中へ隠れた。


「どーもザンス。この旅館の女将ザンスか?」

「左様でございます。ええと、松野様御一行ですね?」

「そうザンス!よろしくザンス」

/ 442ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp