第16章 アンケート回 松怪奇譚〜序〜
「しょうがねぇなぁ。ったく、形が崩れて売りもんにならねぇおでん分けてやるから、顔上げろバーロー」
皿を起き、白身が割れているゆで卵と、サービスの大根を乗せると、イヤミの目に生気が戻る。
「感謝するザンス…持つべきものは悪友ザンス。いただくザンスー!」
ゆで卵に箸をつけた時、事件は起きた。
草むらから狙いすましたように猫が飛び出し、屋台のカウンターに飛び乗る。
「ニャーー!」
「なっ、なんザンスこの猫は!!」
突然現れた一匹の野良猫は、狼狽えるイヤミの前でゆで卵にかぷりと噛み付くと、俊敏な動きで草むらへかけて行った。
「シェーーーッ!!??なにするザンスこの泥棒猫ーーーッ!!!!」
目を血走らせながらイヤミが後を追う。
「待てザンスバカ猫!!臓物引きずり出してヒィヒィ言わせてやるザンス!それはミーの三日ぶりの食事ザンスー!!」
だが、ろくに食事にありつけられなかったイヤミは、すぐにスタミナが切れて失速してしまう。
猫は容赦なくどんどん遠ざかっていく。