第15章 番外編 perfect birthday〜F6〜
そこでふと思い出す。
(どうしよう。一松くんの誕生日プレゼント、雨の中落としちゃったんだ…)
悲しみと後悔が心を蝕み、ゆめ美はしゅんと肩を落とす。すると、ゆめ美の表情を見た一松は、安心させるように優しく頭を撫でた。
「……案ずるな。温め合っていただけで、おれはお前を抱いていない」
「え?」
(そうだったんだ…)
てっきり抱かれたとばかり思っていたゆめ美は、お互い全裸なのに何もしなかった、一松の紳士な一面に胸が熱くなる。
「ち、違うの。そのことじゃなくて…」
俯き、毛布を握り締める。
「一松くん、せっかく誕生日なのになって。ちゃんとお祝いしてあげたかったのに…こんなことになっちゃって…」
無力感に苛まれ、ゆめ美がぽとりと言葉を落とすと…
「ゆめ美、こっちにこい」
一松の腕が、ゆめ美をその逞しい胸へと招き入れた。素肌のまま、二人の肌が重なり合う。
「あ、あのっ、一松くんっ?」
「なんだ?間抜けな声を出して」
突然のハグに動揺し、声が裏返るゆめ美。対する一松は、動じず淡々とした口調だ。
いや、動じてないように見えるだけで…
(一松くんの鼓動とっても速い。落ち込む私を安心させようと、恥ずかしいのにこうして抱き締めてくれてるんだ…)
激しく脈打つ鼓動から、一松の思いが痛いほど伝わってくる。