第15章 番外編 perfect birthday〜F6〜
鼻血を噴射し、意識を途絶えさせていたゆめ美だったが、目が覚めるとまた違う場所にいた。
雲のような、いや、雲に乗るのは不可能だが、イメージ的にその言葉がしっくりくるふわふわなベッドに横たわっていた。
ゆっくりまぶたを開けると、見知らぬ天井が視界に映る。
「あれ、私は一体…」
「気がついたか」
「えっ?」
頭を預けていたのが枕ではなく誰かの腕だったのに気づき、慌てて顔を上げる。
「い、一松くん!?」
「よく眠っていたな」
(嘘!?どうして…っ!)
飛び起きると二人して生まれたままの姿だった。
事後だとしか考えられない状況に、ゆめ美の頬は急速に熱を帯びていく。毛布にくるまり身体を隠すと、一松も頬を染め顔を背けた。
「すまなかった。お前を巻き込んでしまって…」
「巻き込むって?ここはどこ?」
「っ!?覚えてないのか?帝国の追っ手から逃れ逃れて、この部屋に辿り着いたことを」
(そうだった。確か私は鼻血を出した後一松くんに介抱されて、その時帝国の刺客が襲いかかってきて、土砂降りの雨の中、命からがら逃げ出して都心のセキュリティ万全な高級ホテルに来て、シャワーを浴びてそのまま寝ちゃったんだった!)
どうやらゆめ美は、波瀾万丈すぎて記憶が混濁しているようだ。
「きっと疲れてるんだろう。もう少し寝ていろ。全く…何もかも許された恋じゃないから、二人はまるで捨て猫みたいだ」
「あの、それってカラ松くんの管轄じゃ…」
「カラがどうしたって?」
「…なんでもない」
分かりづらいネタはこのまま濁らせておこうと、ゆめ美は言葉を飲み込んだ。