第15章 番外編 perfect birthday〜F6〜
「あっ!」
「ん?なにこれ?」
トド松はすかさず拾い上げ、手のひらのそれをまじまじと眺めると、大きな瞳を輝かせた。
「かわいいー!ピンクのマカロンのキーホルダー?」
きゃぴっとした声を上げるトド松。ゆめ美は気恥ずかしそうに、伏し目がちになりながら言葉をこぼす。
「それ、誕生日プレゼントだったの。驚かせようと思ったんだけど…。一応、手作りなんだ」
「えーっ!ユメのハンドメイド!?」
控えめに頷くゆめ美を見て、トド松はとびっきりの笑顔になった。
「嬉しいなぁっ!!一生大事にするね!」
「ふふっ、こちらこそ、喜んでくれてよかった!」
頑張って作ってよかったと心から思い、ゆめ美は顔をほころばせた。
が、その一瞬の隙が命取りであった。
「ありがと…大好きだよ」
悪戯好きな妖精は、不意にゆめ美の耳元で愛を囁いた。
「ぐっは!!!!」
胸キュンがキャパを超えたゆめ美は、鼻血を噴射しその場に崩れ落ちる。
「ユメ!?大丈夫!?」
トド松がゆめ美の身体を抱きとめ、顔を覗き込むと…
「あれ?笑ってる…?」
ゆめ美は、鼻血まみれになりながらも、幸福に満ちた表情で気を失っていた。
「わぁ、とっても綺麗……安らかに眠れる姫、真紅の血、エクスタシーに酔いしれる寝顔……って、こ、これはっ!!??」
瞬時に何かが降りてきたトド松は、床に落としていた筆を拾い、キャンバスへと向き直った。
「感じる…!ほとばしるパッション!ボクの魂が激しく揺さぶられるッ!!」
恋という魔力が込められた筆は、彼の感じるままに、情熱のままに…まっさらだったキャンバスを染めていく。
これが、後にルーブマ美術館に展示されることとなる「眠れる紅き聖乙女」の誕生秘話である。
・・・