第15章 番外編 perfect birthday〜F6〜
「"世界の謎に迫る、解読不能古代文字全集"!!この書物は絶版になったはずでは!?世界中の図書館、本屋に問い合わせても見つからなかったのに!」
「古本市で見つけたの(ちなみに五十円だった)。チョロ松くん、ヒエログリフがなんちゃらって言ってたから、こういうの好きかなって」
「えぇ…!とても、とても好きです!人類史を学ぶ上で欠かせないものですから!ありがとうございます!!今日から早速、秘蔵コレクションの一員ですよ!」
子供のように喜ぶチョロ松を見て、ゆめ美はクスクスと笑みをこぼす。
「あ、すみません。ついはしゃぎ過ぎてしまいましたね。僕としたことが…」
チョロ松は、恥ずかしそうに本をテーブルへ戻すと、眼鏡を外しゆめ美を真っ直ぐ見つめた。その頬は紅に染まり、目つきはどこかボンヤリしている。
「ゆめ美さん、せっかく二人きりになれたのですから…」
「……っ!」
チョロ松は、ゆめ美の手を包み込む。
「もっと、互いに自己開示しましょう?」
そのまま腕を引くと、ゆめ美をベッドに優しく組み敷いた。
「チョロ松くんっ、急にどうしたの?」
「どうとは?僕は至って冷静ですよ」
色っぽい潤んだ瞳をゆめ美に向けながら、シャツのボタンに手をかける彼は、どう考えても冷静には見えない。
普段の、感情に流されず冷静沈着な彼からは想像もつかない、実にスムーズなベッドインである。
「ま、待って待って!もしかして酔ってる?」
「そうですね。貴女に酔ってしまいました」
その美しい胸板をあらわにした童貞イケメンは、妖艶な視線を注ぎながら、甘い声で囁いた。
「ではこうしましょう?僕と貴女はお酒に酔った。だからこうして本音で向き合い、心をさらけ出し、結果、肌を重ねた——いいですね?」
「チョロ松く…ん…」
柔らかなキスが戸惑う唇を奪う。アルコールで火照った肌が一つに重なり合う。
「さぁ、貴女という羊皮紙に、僕のインクで恋文を書かせてください…」
「あ…んっ」
美しい指が、ゆめ美の首筋に何かを描いた。
それは、ヒエログリフで——「愛」。
「僕はもう、貴女なしでは……」
こうして、ゆめ美はチョロ松とたっぷり濃密な時間を堪能した………らしい。
・・・