第15章 番外編 perfect birthday〜F6〜
おそ松はチンピラの子分がいなくなると、ゆめ美を優しく抱きしめた。安心させるよう、耳元で柔らかな声を紡ぐ。
「ゆめ美ちゃん、もう大丈夫だよ」
「助けてくれてありがとう…」
「気をつけないとダメだよ?キミという可憐な花を狙う悪い虫はごまんといるんだから」
「そ、そんな…可憐な花だなんて…」
恥ずかしがるゆめ美の髪を撫でていると、おそ松はアスファルトに袋が落ちているのが目に入った。かがんでそれを拾い上げる。
「これはゆめ美ちゃんのかい?」
「あ…っ!」
しまった、とでも言いたげに声を上げるゆめ美。
袋を受け取ると、中から赤いリボンのラッピングを取り出し、おそ松の手にそっと乗せた。
「はい、早速バレちゃった。ハッピーバースデー」
「えぇっ!ありがとう!開けてみてもいいかい?」
「どうぞ」というゆめ美の返事を聞き、おそ松は丁寧にリボンを解く。
「わぁ!美味しそうだ!」
貧しいゆめ美がおそ松にプレゼントしたのは、手作りのクッキーだった。
「大したものを用意できなくてごめんなさい」
「そんなことないさ!キミの気持ちが込められた僕にとって宝物のクッキーだよ!」
そう言って、シャクリと一口食べて満面の笑みを向ける。
「ほら、ゆめ美ちゃんも…」
「え?私は………んっ」
おそ松は、食べ途中のクッキーを咥え、ゆめ美の唇へ運んだ。唇が触れ合い、クッキーが半分に割れる。
「ねぇ、忘れないで?キミの唇に止まる蝶は僕だけだよ」
「おそ松くん…」
「アハハッ、かけらがついてる」
おそ松は甘い声で笑いかけると、ゆめ美の頬についたかけらを舐め取った。
イケメンにそんなことをされ、無事でいられるワケがない。
ゆめ美は余りの胸キュン展開に意識を手放しかけた——が、おそ松に抱きすくめられる。
「さっ、行こうか?二人きりのドライブに——」
力なく頷くと、そのまま横抱きにされオープンカーの助手席へ…。
甘い時間はまだ始まったばかり——。
・・・