第15章 番外編 perfect birthday〜F6〜
「ああん?ねーちゃんがぶつかった拍子に、アメリカンドッグ食ってたヤローと玉突き事故したからだろボケェ!」
「嘘です!誰もいなかったじゃないですか!」
ゆめ美は怯えながらも逃げようと試みるが、薄汚い子分チンピラに乱暴に腕を掴まれてしまう。
「なぁ、お詫びに俺らと玉突きしようぜ?悪いようにはしねぇからさぁっ!」
「いや!やめて!離してぇっ!!」
ゆめ美の悲鳴が街中で響き渡る。しかし、人々は知らん顔で通り過ぎるのみ。
嫌悪と恐怖で震えながら、ゆめ美は心の中で彼の名を呼んだ。
(助けて…おそ松くん…っ!)
チンピラ達がゆめ美をたまたま都合よく目の前にあった屋内型スポーツ施設へ連れて行こうと腕を引っ張ったその時——三人の眼前に真っ赤なオープンカーが停まった。
「お兄さん達、その辺にしておいてくれる?」
ピンチスレスレで現れるのがヒーローである。
「おそ松くん!」
おそ松と呼ばれた赤髪の超絶イケメンはオープンカーを路肩に止めると、ドアを開けず颯爽と飛び越えクルリとワンターンし、チンピラ達からゆめ美を奪うように抱き寄せた。
いちいち細かい所作がイケメンである。
チンピラ達は一瞬見惚れるものの、ブンブンと首を振って我に返る。
「なんだテメーは!」
「ハハッ、なんだかんだと聞かれたら、『ジェンダーの垣根を超える愛の伝道師、爽やかジャスティス松野おそ松』とでも言っておこうか」
「なんだそのいかにも用意してました感満載の自己紹介はぁぁあ!!胸がキュンとすんだろボケェ!!」
「あ、兄貴!ヤベーよ!こいつ、F6の…!」
「んなこたぁカンケーねーんだよ!おいイケメン様よぉ?俺らはこれからこのねーちゃんと玉突きしていろんなとこ突っつきあうんだよぉ!とっとと失せねぇと痛い目見るぜぇ?」
コキコキと腕を鳴らしながら凄むチンピラ達とは対照的に、おそ松は涼やかな微笑をたたえている。
「話は聞いてたけど、嘘ついて女の子を脅すのは、あまりいい趣味とは言えないんじゃないかな?」
「はぁっ!?何ぬかしやがる!兄貴は確かにさっき、このアマにぶつかってシャツを汚したんだよ!」
「そっちからワザとぶつかったように見えたけどなぁ?それに——」