第15章 番外編 perfect birthday〜F6〜
賑わう街を、一人歩く乙女がいた。
(みんな喜んでくれるかな)
今日は五月二十四日。
この物語の主人公である女の子、ゆめ美が大好きな六つ子達のバースデー。
手には、この日の為に準備したプレゼント。
この世界で「六つ子」と聞いて人々が連想するのは、国民的アイドルでありながら、かの有名な赤塚不二夫財閥に属し、一国家に匹敵する権力を持つと言われている、松野家の六つ子達のことである。彼らは不二夫の"F"を取って、通称「F6」と呼ばれている。
そんな六つ子とゆめ美は、語り尽くせば辞書一冊分くらいの字数になり、涙腺に響くともっぱらの噂の、超絶劇的な出会いを経て心を通わせる仲となった。
しかし、全員イケメンで銀河級のステータスを持つ六人。一人を選ぶなんて酷なことゆめ美には出来かねる。
そんなわけで、バースデープレゼントを全員分用意し、ゆめ美は六つ子に会いに街を歩いていた。
(この角を曲がった伝説の樹の下が、おそ松くんとの待ち合わせ場所…)
はやる気持ちを抑えきれず、少し早足で角を曲がろうとすると、
「キャッ!?」
「あぁん?なにすんだねーちゃん?」
なんかいかにもなチンピラにぶつかってしまった。それも、二人組に。
「す、すみません急いでいて、つい」
「謝って済むならマッポはいらねぇんだよ?なぁ?」
「あーあ、ぶつかった衝撃で、兄貴のお気にのシャツにケチャップついたじゃねーか!どーしてくれんだよねーちゃん?」
「い、言いがかりはよしてください!私がぶつかって、なんでケチャップが付くんですか!!」
ゆめ美はごく当たり前の反論をする。だが、得てしてこういう場合、チンピラ共は支離滅裂で無茶苦茶なことを言い始めるものだ。