第14章 トッティメモリアル
手を繋ぎ、廊下へと出ようとした二人に、容赦なくジェイソンが立ちはだかった。
「ほんぎゃあぁぁあ!!??」
奇妙な声で叫ぶトド松を、ゆめ美は引っ張るようにして床に伏せる——と、頭の上、ジェイソンが持っていた生首が掠めていった。
「トッティ!しゃがんで!」
「あ、あわわわ…」
だが、恐怖で固まり立ち尽くしていたトド松はそれを避けきれない。
「死ねトッティボケェ!!」
トド松の頬に生首がヒットする——が、発泡スチロールだったためぽふっと頬を撫でただけだった。
「ひゃん!?っておい!なんで今ボクの名前呼んだ!!??」
「演出ですよ…お客さん…あっはぁ!」
怯んだトド松へ、今度はデコピンをお見舞いするジェイソン。
「いったーい!?なにデコピンて!?ってかさっきの係員!?」
殴られた頬を押さえ、トド松はびしと指を突き刺した。
「もう確信した!お前一松兄さんでしょ!!」
「トッティ何言ってるの!錯乱してないで早く逃げるよ!」
「いや逆に思考がフル回転だから!なんで兄さんがここにいるんだよ!!」
「兄さん?何を言ってるんだい?そうかそうか…キミはこのまま死体となって、私の家族になりたいんだね…?」
ジェイソンは生首を床に放置したまま、今度はナイフを構えてトド松と対峙した。
トド松も負けじと、震えながらも拳を固く握り締め、手錠をかけられていない手でファイティングポーズを取る。
「見ててよユメ!今こいつのマスクを外して正体を暴いてやる!」
「さっきから何言ってるの!早く出口行くよ!」
「えっ!ちょ、ちょっと待ってユメ!!」
「待たない!!」
トド松の言うことを信じられなかったゆめ美は、駄々をこねるトド松を無理やり引っ張り、出口まで向かったのだった。
・・・
「…あーあ、もうちょっとからかいたかったのに…」
謎の係員は正体を明かすことのないまま、遠くなる二人の背中を死んだ魚の目で見つめていた…。