第14章 トッティメモリアル
不気味に軋むドアの向こうには、不気味な祭壇があった。何本ものロウソクが、床に血で描かれた魔法陣を囲むようにして立てられている。壁や床のあちこちに血が飛び散るタイル貼りの部屋の奥には、腐敗した水が入った浴槽がある。
今までの部屋とは比べ物にならないくらいに凄惨な光景に、ゆめ美は固唾を飲んで佇んだ。
「ユメ、目を開けてもいい?」
「うーん…ずっと開けない方がいいかも」
「え?えぇっ!?でも逆に何があるか分からない方が怖いんだけど…!」
「もうちょい我慢してて」
そう宥めながら、ゆめ美はある一点を凝視していた。
視線の先は魔法陣。
ロウソクの炎が妖しく揺らめきながら、魔法陣の中央、照らしているのは——
(干からびた…死体?)
数歩進み、横たわるミイラを目を凝らして調べていると、ミイラの右手に何かが光った気がした。
「トッティ、ちょっとしゃがむね」
震えて腕にしがみつくトド松に声をかけ、ゆめ美は膝をつく。
作り物なんだから平気だと必死に胸中で繰り返し、おぞましいミイラの手を覗き込むと、やはり見間違いではなかったようだ。
「トッティ!鍵がある!」
「ほんとに!?やった…!」
そっと拾い、アンティークなデザインの鍵を確かめるようにいろんな角度から観察する。
「うん…きっとこれが出口の鍵だよ!」
「ユメすごい…ってひぎゃあぁぁぁあ!!??」
「トッティ!?」
トド松が誤って目を開き、断末魔のような悲鳴をあげた途端、廊下からドタドタと走る音が近づいてきた。
「もぅっ!なんで目を開けちゃうの!」
「だ、だって!鍵見つかったって言ってたから嬉しくなっちゃったんだもん!」
「こうなったら、このまま一気に出口まで走るよ!ついてきて!」
「なにそれカッコ良すぎー!」
「いいから早く!」