第14章 トッティメモリアル
寝室を出ると、トド松はまたゆめ美の腕にひっつき虫である。
目に涙を浮かべ、か弱い女の子のように怯えるトド松は、さっきベッドの下で見せた顔とはまるで別人だ。
(誤魔化されたと思ってたけど、この様子だと本当に何にもなかったのかも…)
もし勘違いして泣いてしまったのならば、申し訳なさと恥ずかしさで顔から火が出そうだ——なんてゆめ美が考えていると、トド松がツンツンと肩をつついた。
「な、なぁに?」
「なんか向こう、明るくない?」
トド松が指し示したのは、先ほど入りそびれた一階の廊下の突き当たりにあった部屋だ。
二階をくまなく探した結果、結局鍵は見当たらず、こうして一階に戻って来たわけだが、先ほどまで突き当たりの部屋は真っ暗だったはずなのに、今はドアの隙間から明かりが漏れている。
いかにも何かイベントが起きそうだ。きっと、避けては通れない。
(行くしかないよね…)
ゆめ美がトド松に目配せすると、トド松も視線を投げ返し、慎重な足取りで突き当たりへ進んだ。
(トッティ、開けるよ)
(お、オッケー…)
トド松はオッケーと言いつつ、ゆめ美の背中へ避難する。そんなトド松へ、ゆめ美は小さな声で話しかける。
(じゃあ、何かあるか私が先に見るから、いいって言うまで目を開けないでね?)
(え?うん…分かった)
それは、ジェイソンをおびき寄せてしまうトド松シャウトを防ぐための苦肉の策。
怖くても、またジェイソンに襲われるくらいなら自分一人で中を確認してあげようという、ゆめ美の勇気ある決断であった。
ゆめ美は一度深呼吸すると、硬く瞼を閉じるトド松を庇いながら、意を決してドアを開けた。