第14章 トッティメモリアル
開かれたドアからチラリと見えたのは女の子の顔。
(よかった…他のお客さんだった)
こういう時、現実に引き戻してくれる何かがあると、ものすごく安心するものだ。
ゆめ美はトド松を落ち着かせるよう、振り返り耳打ちした。
「トッティ、私達もあそこを探索しよ…う…?」
前方を見ながらガタガタ震えだすトド松。不審に思い、ゆめ美もドアへ視線を向けると…
「ゔぉあぁぁあぁぁあ!!」
「ギャーーーーッ!!??」
そこにいたのは女の子ではなく、女の子の生首を持ったジェイソンだった。ジェイソンはおぞましい叫び声をあげると、右手に血がついたナイフ、左手に生首を持ち、二人めがけて突進してくる。
「ヤダヤダヤダー!!ごめんなさいぃぃい!!」
「わっ!?トッティ!!」
トド松はゆめ美の腕を引き、二階へと続く階段を駆け上った。無我夢中で走り、手当たり次第に見えたドアを押し開ける。
急いで扉を閉め、隠れる場所がないか部屋を見回す。窓から漏れる青白い月明かり(風なLED)に照らされた部屋は、クローゼットとダブルベッドが置かれていた。どうやらここは寝室らしい。
トド松がしゃがんベッドの下を覗くと、ギリギリ人が二人入れそうなスペースを見つけた。
「ユメ、ここに隠れよう」
悩んでる暇なんてない。ゆめ美は頷いた。
トド松はゆめ美の腕を手錠で傷つけないよう慎重に身をかがめ、ベッドの下へと潜り込む。
乱暴にドアが開かれたのは、二人が隠れた直後だった。
演出だとしても、作り物だとしても、怖いものは怖い。
ジェイソンの足音が床伝いに聴こえてくる。
二人はうつぶせになりながら、恐怖で息を震わせる。
クローゼットがギィと音を立てて開けられ、その音に身体がビクリと反応した——その刹那、ゆめ美は気がついた。
(トッティ…!?)
(ごめん、我慢して)
二人は、唇が触れそうなほど超至近距離で顔を見合わせていた。