第14章 トッティメモリアル
館の中は薄暗く、キャンドルライトのオレンジの光が通路を点々と照らしているのみだった。
洋風な佇まいは不気味一色で、壁や家具、至る所に血糊がついたホラー映画顔負けのセットが施されている。
手錠のついた手を庇いながら、二人は恐る恐る廊下を進んでいた。
先頭は案の定ゆめ美である。
「うぅ…こわいよォ……」
(もぅ、あんなに平気って言ってたのに…)
ゆめ美は嘆息混じりに胸中で呟き、吸盤でくっついてるんじゃないかと思うくらい密着するトド松へ声をかけた。
「あのさ、そんなにくっつかれたら歩けないよ」
「離れちゃやだーっ!慣れるまでこうしてて!お願い!」
トド松は目を潤ませて、ゆめ美の腕をギュッと掴む。
ゆめ美だって怖くてたまらないのだが、トド松がこうなってしまっては自分がリードするしかない。
目を凝らして前方を見やると、ぼんやりとロウソクの灯りを反射させるドアノブが遠くに見えた。
「ええと、とりあえず鍵を探さないといけないんだっけ?」
「う、うん」
「じゃあ、廊下の突き当たりにドアが見えるから、あそこに入ってみよ?」
館に入った直後、流れてきたゾンビボイスのアナウンスガイドによると、ジェイソンに見つからぬよう、隠れながら鍵を見つけ出し、脱出しなければならないらしい。
突き当たりの部屋に向かい、二人がゆっくり歩いていると、どこからか女の甲高い悲鳴が聴こえてきた。
「あんぎゃぁぁああー!!」
「キャアッ!?」
悲鳴に驚いたトド松が奇声を発し、更にその奇声でゆめ美が驚き声を上げるという、負の連鎖が起こる。
——と、入ろうとしていた突き当たりのドアがゆっくりと開いた。