第3章 さぁこの出会い、本物の愛にまで育つかな?
店をキョロキョロと見渡してから一松が口を開く。
「この店…見覚えある」
「ぼくもぼくもー!」
目を爛々と輝かせながら十四松が余った袖で店の奥を差した。
「あの蓄音機、ロボみたいーって言ってたの思い出しマウンド!」
「ははっ、ちっちゃい時家族で来てくれてたからねぇ。憶えててくれて嬉しいよ」
「そうだったの?じゃあ私達ここで会ってたかもしれないね」
店主はゆめ美に、かつて六つ子がこの店に来ていたのを話していなかったようだ。
「しかしマスター、オレ達が来ていたのは十年以上も前のはず。それをメモリーしてくれていたなんて…!」
「世にも珍しい六つ子を一目見て、忘れるって方が難しいさ」
「オッさん憶えててくれたんだな〜俺全然憶えてねーけど」
「オッさん言うな!店長って呼べ!」
またしても無礼な長男を叱る三男を、店主はまぁまぁと宥める。
「元気があっていいじゃないか!それに、ジイさんじゃなくてオッさんと認識してくれて嬉しいよ」
「スイマセンね、この緑のがやかましくて」
「お前が元凶だろ…!」
楽しそうに笑う店主とアホ面なおそ松を眺めながら、ゴムのオッさんやっぱ心広い、心の器ハンパない、とトド松は強く思った。
所々話が脱線しながらも、全員の自己紹介が終わると「ゆっくりしていってね」と一言告げ、店主はキッチンへ戻って行った。