第3章 さぁこの出会い、本物の愛にまで育つかな?
カランコロンと心地よいドアベルの音に出迎えられ、六つ子はアカツカ亭の店内へと足を踏み入れた。
ちょうどランチタイムの混雑が終わり、客は彼らしかいないようだ。
「いらっしゃいませ!みんな、ホントに来てくれたんだ!」
はじける笑顔でドアの前に立つゆめ美。
四人席と二人席をくっつけ六人を案内し、コトリと水を置く。
「やぁいらっしゃい」
キッチンから店主が顔を出すと、六人は立ち上がった。
背筋を伸ばし、身体を強張らせながらおそ松が挨拶する。
「ど、どうも、友だちからスタートした松野おそ松です!ある日突然出会っちゃって、なんやかんやあってゆめ美さんと仲良くしてもらってます」
ツッコミどころ満載な自己紹介だが、店主は動じることなく目を細めて微笑んだ。
「私はゆめ美ちゃんの伯父で、店長の近藤六三四(こんどうむさし)だよ。よろしく」
店主が握手を求めると、手汗をパーカーで拭っておそ松も手を差し出した。
次に握手をしたのは十四松。
「十四松です!こんにちはー!コンドームさん!!」
「やめろ十四松!!謝れゴムおじさんに!」
「ノンノンノン!何を言ってるんだおそ松!マスターラバーだろ?すまないマスターラ」
言い終わる前にスパパパーーンッ!と乾いた音が響き渡る。
「黙れこのどさんぴん共!!」
店に入って早々、チョロ松のハリセンが三人の脳天へ炸裂した。
「っんとにコイツら…すみませんコンドーさん、兄弟が失礼を言って…」
「カタカナ表記してる時点でチョロ松兄さんも同類だから!えっとー、ボクの兄さん達がぁ、ホントーにごめんなさーい」
ぶりぶりぶりっこなトド松の上目遣いメンゴを見て、店主は声を上げて笑う。
「はははっ!気にしてないよ!何を隠そう、私の中学時代のあだ名はゴム男だったからね。すっかり慣れっこさ。でも、店長って呼んでほしいかな」
トド松は思った。
ゴム男、器広すぎ…と。