第13章 十四松の誓い
「失礼しまーす」
「じゅうし…ってなんで裸!?」
「服こっちだったー」
パンイチの十四松が目に飛び込んできて、ゆめ美はすかさず目を逸らす。
十四松はゆめ美に背を向け、押入れからガサゴソと服を取り出し着替え始めた。
(パンツ一枚とか恥ずかしくないのかな!?いや、私を意識してないからこそ平気とか?)
頬を火照らせつつ顔を上げると、見るつもりは無かったのだが、視線の先に背中があった。
トレーニングは欠かさないと言っていただけあって、その後ろ姿は程よく筋肉がつき、男らしい身体つきをしている。
不意打ちの筋肉に、どくっと胸が高鳴ったところで、十四松はすぽんとパーカーを被り、少年のような笑顔で振り向いた。
「お待たせー!」
「ぁ…うん」
「あれ?顔赤いね?」
「ゆ、夕日でそう見えるだけじゃないかな?」
ゆめ美がそう言うと、十四松はベランダに続く窓を開けた。
「おおーー!確かに赤いね!!」
「うん、赤い赤い」
「獣神サンダー!!!!」
「ちょっと、分からないかな」
「マジすか!」とニッカリ笑う十四松を見て、やっぱり不思議くんだ、とゆめ美は胸中で呟いた。
十四松はだぼだぼなパーカーの袖をゆめ美へ差し出す。
「行こう?ゆめ美ちゃん」
「行くってどこへ?」
「屋根の上で夕日ぼっこ」
「え?で、でも落っこちない!?」
「平気だよ。おいで」
十四松は余った袖ごしに手を引いて、梯子をかける。
「屋根の上で見る夕日、すっげー綺麗だから」
十四松の笑顔は、キラキラしていて、夕日よりも眩しかった。
「…うん」
ゆめ美はその笑顔に魅せられ、臆病を閉じ込め頷いた。