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おそ松さん〜恋セヨ松野さん〜

第13章 十四松の誓い



松野家に着くまで、十四松はバットを肩にかつぎ、「マッスルマッスル、ハッスルハッスル」と、終始お決まりの掛け声で街を練り歩いた。
途中、ホームレスに律儀に挨拶したり、横断歩道にいたおばあちゃんを何故か肩車して渡ったり、共に時を過ごせば過ごすほど、ゆめ美はこの十四松という生命体が分からなくなっていった…。


「マッスルマッスルー!!ハッスルハッス…ただい卍固めーー!!」

「お、お邪魔しまーす」


十四松が勢いよく引き戸を開け、ゆめ美を家へ招き入れる。

家は真っ暗で、他の兄弟や親は出払っていた。


「この間は居間だったから、今日はぼくらの部屋に案内するよ」

「ありがとう」

「ぼく着替えてくるから、先部屋に入ってて」


返事をしてゆめ美は階段を上る。


(他人の家って、独特の香りがあるよね…)


ゆっくりと階段を上りながら、ゆめ美は松野家の空気を鼻で深く吸い込んだ。どこか懐かしさを感じさせる匂いに胸がいっぱいになる。

ゆめ美にとって、昭和のまま時が止まったような、古き良き佇まいの松野家はとても居心地がよかった。
それは、ゆめ美の伯父のアカツカ亭と同じく、昭和レトロな雰囲気が残っているからかもしれない。

まだ遊びに来たのは二回目だが、幼少の頃から通い詰めているような錯覚を覚えるほど、ゆめ美はこの家全体の雰囲気に心が和らいだ。

二階に着き、襖を開けると、カーテンが開いた窓越しに夕日が出迎えた。

ゆめ美は、なんとなく暖色の明かりが心地よくて、電気をつけずにソファーへ腰を下ろす。
座った足元には積み上げられた漫画本。
もしかしたら先ほどまで誰かいて、ちょうど入れ違いになったのかもしれない。


(ここで、毎日みんなは過ごしてるんだ…)


本棚にどんな本があるのか眺めたり、壁に掛けられたサーフボードは誰が使うんだろうなんて部屋を見回していたら、ドタドタ階段を上る足音の後に襖が開いた。



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