第13章 十四松の誓い
・・・
トト子は店番があるため、おしゃべりは夕方にお開きになった。一人になったゆめ美は、散歩がてらぷらぷらと商店街を歩いている。
(そだ、本屋寄ろうかな)
欲しかった漫画の発売日だったのを思い出し、駅前通りに足を向けたところで、あの人物に出くわした。
「出くわしたというか、遭遇したというか…」
「あーっ!ゆめ美ちゃんだー!!」
「十四松くん。あの、なんで全身びしょ濡れ?」
「えーー?泳いで濡れない人はいないよ?」
季節は五月。一体どこを泳いだというのだろう。
「野球のユニフォーム着てるのに、野球じゃなくて泳いだんだね?しかも着たまま…」
流した方がよかったのかもしれないが、ゆめ美はどうにも気になってしまい、聞かずにはいられなかった。
「だって、まだ五月だからね。マッパだと風邪ひいちゃうよ?」
「……じゃあ、泳がなければいいんじゃないかな?」
「ううん。ぼくね、トレーニングは欠かさないんだ!」
…ゆめ美は、目を丸くしながらも、とりあえず頷いた。行動も不可思議だが、返答はもっと謎めいており、これ以上踏み込んだらいけない気がしたのだ。
「そ、そうなんだ。で、トレーニングはもう終わったの?」
「うん!!」
嬉しそうに笑う十四松の笑顔は、無邪気でとても愛らしい。
その可愛さで数々の奇行は全部チャラである。